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2026年診療報酬改定で「説明可能な見守り」を考える ― 判断につながるアラーム情報は、どう設計すべきか ―

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  • 6 分前
  • 読了時間: 6分
判断支援につながるアラーム情報

前回までに、見守りを成立させるためにはまず制御可能な管理対象、すなわち医療機器のアラームを起点にする必要があることを整理しました。



そして、アラームのノイズを抑え、制御できるようになったとしても、「現場はあまり楽にならない」「評価・説明ができない」という状況に陥ることが少なくないことも見えてきました。



その背景には、アラーム情報が現場の判断を支援し、実際の行動や業務改善に結びつく形で設計されていないという問題があるのではないか、という点を前回の記事では問題提起しました。





では、判断支援につながるアラーム情報とは、具体的にどのような設計になっているべきなのでしょうか。



今回は、その視点を整理します。 なお、ここで言う設計とは、システムの機能設計というよりも、アラーム情報をどのように現場の判断や行動に結び付けるかという運用上の設計を指しています。





判断支援情報の設計を考える3つの視点

判断支援につながるアラーム情報を設計する際には、次の3つの視点を押さえておくことが重要です。





1. 現場の意思決定プロセスを意識する



アラームが「判断支援につながる」とは、現場が迷わずに次の行動を考えられる状態をつくれている、ということです。



現場の意思決定は、一般に次のような流れで行われます。


  • 状況の把握

  • 変化の意味づけ

  • 次の対応の立案

  • 実行優先度の判断


このプロセスを念頭に置くと、アラーム情報は単なる「事象の通知」では不十分です。



例えば、


  • この変化はいつから始まっているのか

  • どの程度の変動が起きているのか

  • これまでの状態と比べて何が違うのか

  • 直近でどのような対応が行われたのか


といった情報が、意思決定の材料として階層的に整理されている必要があります。



言い換えると、アラーム情報は現場が頭の中で行っている「状況整理」を、そのまま外在化したような形で提示されることが求められます。





2. 「点」ではなく「状況」として捉えられる構造にする



アラームが鳴った瞬間の情報、つまり「点」だけでは、現場は結局ベッドサイドでの再評価に頼らざるを得ません。



一方で、時間的な推移、患者ごとのベースライン、他の情報との関係性まで含めて提示されると、判断の中でどこが重要で、どこが様子見できるのかが見えやすくなります。



そのための設計視点としては、例えば次のようなものがあります。


  • 時間軸を含めること

    • 変化はいつ始まったのか

    • 対応前後でどう推移しているのか

  • 患者のベースラインと比較すること

    • 普段の状態と比べてどの程度の変化か

    • これまでにも見られたパターンかどうか

  • 他の情報との関連性を示すこと

    • 他のアラームや記録、介入との関係


これらを組み合わせることで、アラームは単なる通知ではなく、「この状況がどれだけ判断材料として重いのか」を考えるための情報になります。





3. 情報を「次の行動と結びつけられる状態」にして、現場でマニュアル化する



アラーム情報が「イベントの発生」や「閾値到達」だけに偏っていると、現場は次に何をすべきかを、その都度考え直すことになります。



そこで重要になるのが、

この表示が出たときに、現場としてどの行動を取るのかをあらかじめ定義できているかどうか

という視点です。



病院の規模、診療科、夜間体制、権限設計によって「正しい行動」は当然異なります。そのため、行動そのものをシステム側が一律に提示するのは現実的ではありません



むしろ、


  • システムは生の情報を提示する

  • それに対して、次に起こす行動を現場の運用として定義しておく


という役割分担の方が、現実的で汎用性が高く、想定外の事態にも対応しやすくなります。



例えば、


  • この種類のアラームが、この条件・この時間帯で表示された場合 → 原則として即時訪室

  • 同じアラームでも、過去の傾向が安定している場合 → 経過観察として記録のみ

  • 夜間帯で一定条件を満たした場合 → 当直医への報告基準に該当

  • 想定外のアラームの場合 → 即時上長に報告・相談


といったように、「表示される情報」と「取るべき行動」をマニュアルとして結び付けておきます。



こうしておくことで、


アラーム表示 → 判断 → 行動


という流れが、個人の経験や勘に依存せず、組織として再現可能な形になります。



システムは、現場があらかじめ定めた判断と行動の枠組みに対して、必要な情報を過不足なく提供できていればよいのです。



なお、AIを使えばよいのでは、と思われる方も多いかもしれません。しかしAIは原理上、「過去に多く起きてきたパターン」をもとに提示を行います。

一方、医療現場では、起こりにくいことが起きたときの判断こそが重要になる場面が少なくありません。



そのため少なくとも現時点では、判断そのものをAIに委ねるのではなく、現場が定めた判断と行動の枠組みを支える材料として情報を提示するという立ち位置が、現実的で安全だと考えています。





業務改善との接続 — 判断が変わると何が変わるか

判断支援情報が整うと、次のような業務の変化が起きます。



不要な訪室の削減

「念のための訪室」が減り、「今は安全に見守れる」という選択が成立します。



優先度の明確化

事象の重みづけがしやすくなり、スタッフ間で「何を先に対応すべきか」の共有が進みます。



夜間帯の負担軽減

判断の根拠が明確になることで、「まだ経過観察でよい」という判断が安心感をもって行えます。



判断のばらつきの縮小

経験差に左右されにくくなり、安定した運用につながります。





効果検証 — 何を評価すべきか

判断支援情報が整うと、効果検証も自然につながってきます。



例えば、


  • 判断の変化そのもの

    • どの選択肢が選ばれるようになったか

    • 判断に要する時間はどう変わったか

  • 訪室や対応の変化

    • 不要な訪室の削減数

    • 優先度の高い対応への集中度

  • スタッフの負担感

    • 判断に迷う場面の減少

    • 夜間帯の安心感の向上


これらは単なる数値ではなく、現場の意思決定がどう変わったかを示す指標になります。





情報設計は「判断を楽にするフレーム」づくり

説明可能な見守りとは、単にアラームを減らしたり、機器を連携したりすることではありません。



それは、現場の判断という意思決定を支えるための情報の設計です。



センサーやシステムはあくまで材料であり、それをどう整理し、どう提示するかは、看護業務という文脈の中にあります。



次回は、この判断支援アラーム情報をどのように業務フローに組み込み、省略すべき業務と強化すべき業務をどう整理していくのか、という視点から考えていきます。

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