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構造化からナラティブ+AIへ|技術解説書2.0.0版が示す医療データ統合の新潮流

  • 執筆者の写真: MEGTAR_PR
    MEGTAR_PR
  • 2 日前
  • 読了時間: 9分

2026年1月5日、厚生労働省が「電子カルテ情報共有サービスの導入に関するシステムベンダ向け技術解説書 v2.0.0」を公開しました。



電子カルテの共通化やデータ標準化の実現は、医療機関だけでなく、医療データ統合プラットフォームを提供する事業者にも大きな影響を及ぼすものとなっています。


この最新版には、全国の医療情報基盤整備における重要な節目となる内容が含まれており、医療データ標準化をめぐるこれまでの方向性に大きな変化が見られます。



理想主義から現実路線へ | 方針の大きな転換

従来の技術解説書では、診療情報提供書や退院時サマリーといった文書情報について、FHIRによる構造化データの整備が理想とされてきました。


FHIRは医療情報交換のための国際標準規格であり、データを機械が読み取りやすい形式で構造化することで、医療機関間でのスムーズな情報共有を実現することが期待されていました。全国規模で一貫した構造化データが整備されれば、紹介状や退院サマリーの内容を自動的に解析し、医療の質向上や効率化につながるというビジョンです。


しかし、この理想的なビジョンを全国規模で一斉に実現することには、現場レベルで複数の課題があることが明らかになってきました。


最も大きな問題は、医療機関ごとに記録の粒度や詳細度が大きく異なることです。ある病院では詳細な検査値まで記録する一方、別の診療所では必要最小限の情報しか記載しないといった違いが存在します。さらに、病名や症状を表すコード体系についても、施設によって使用する用語集や分類方法が異なり、完全な統一は困難な状況でした。


加えて、電子カルテシステムを開発する各ベンダー間での実装方法にも差異があり、同じFHIR規格を採用していても、実際のデータ構造や項目の解釈が微妙に異なるケースが報告されていました。


こうした要因が重なることで、構造化データの品質が安定せず、紹介元の医療機関が送信した情報と、紹介先の医療機関が受信・表示した情報との間に内容のズレが生じるリスクも指摘されていました。医療現場にとって、情報の正確性は極めて重要であり、このようなリスクは看過できない問題です。


こうした現実を踏まえ、2.0.0版では文書本文の共有について「Narrative(テキスト形式)」またはPDFを必須とし、FHIR構造化データについては当面「任意」とする方針へと大きく舵を切りました。


この方針転換は標準化そのものを放棄したというわけではありません。臨床情報や健診情報については引き続きFHIRによる構造化が求められていますが、文書情報についてはまず共有可能な形で全国展開を優先し、構造化は対応可能な施設から順次進めていくという段階的なアプローチが採られることになったというのが実情です。


ただし、この転換は、初期段階で完全な構造化を全国一斉に実現するという従来の理想主義的な考え方からの脱却を意味します。医療現場の実情や負担を十分に考慮し、まずは確実にデータ共有ができる仕組みづくりに重きを置く。そして、技術的な成熟度や施設の準備状況に応じて、徐々に構造化を進めていく、という表明です。


この現実的で段階的なアプローチこそが、2.0.0版の最大の特徴と言えるでしょう。



当面続くデータ形式のばらつきと医療機器の現状

この方針変更が意味することは、少なくとも今後数年間は、文書ベースやPDFベースのデータが医療機関間で多数共有され、医療データの形式が施設ごとにばらついた状態が続くということです。構造化されたデータと非構造化のテキストやPDFが混在する環境が、当面の標準となる見込みです。


実は、この状況は医療機器の通信規格が統一されていない現状とも符合しています。医療現場では、検査機器、モニタリング装置、画像診断装置など、さまざまな医療機器が使用されていますが、これらの機器が出力するデータ形式は極めて多様です。HL7という医療情報交換の標準規格もありますが、すべての機器がこれに対応しているわけではありません。画像診断装置ではDICOMという別の規格が使われ、検査機器の中には独自のCSVやXML形式でデータを出力するものも少なくありません。さらに、画像データやPDFとして結果を出力する機器も多く存在します。


つまり、医療現場ではもともとデータ形式の統一が進んでいない状況があり、今回の技術解説書が示す「まずは共有可能な形でデータを扱う」という方向性は、ある意味でこの現実を追認したものとも言えます。


理想的には全てが統一されたフォーマットで標準化されることが望ましいのですが、現実の医療現場では、多様な形式のデータを扱わざるを得ない状況が今後も続くと考えられます。



後処理型データ統合アプローチの重要性

標準化が段階的に進むということは、データ形式のばらつきが当面残ることを意味します。


医療機関やシステムベンダーが標準化対応の負担を先送りすればするほど、異なる形式のデータを統合・活用する仕組みの必要性は高まっていきます。


ここで注目されるのが、後処理型のデータ統合アプローチです。


後処理型アプローチとは、データが生成される時点で完璧に構造化することを求めるのではなく、まずは現状のままの形式でデータを取り込み、後から必要に応じてAIやOCR技術を使って構造化・統合するという考え方です。


このアプローチの利点は、データの生成元(医療機器や電子カルテシステム)に大きな変更を加えることなく、多様な形式のデータを統合できる点にあります。


医療機関にとっては、既存のシステムや機器をそのまま使い続けながら、データ活用の恩恵を受けられるというメリットがあります。また、PDFやテキスト形式のデータが中心となる環境は、まさに「まずは現状の情報を保存し、必要に応じて後で構造化する」という流れを生み出しており、今回の技術解説書が示す方向性とも整合しています。


国の技術解説書が「現場の限界を踏まえた現実的な共有」を選択したことで、標準化対応への即座のインセンティブは低くなる一方、データ形式のばらつきが当面残るという見通しが強まっています。このような環境では、後処理によるデータ統合のニーズが増大していくことは想像に難くありません。


MEGTARはまさにこの後処理型アプローチを採用しており、医療機器の画面情報を画像として取り込み、光学式文字認識(OCR)や人工知能を活用して後処理的にデータを抽出・統合・構造化する仕組みを提供しています。開発当初はそこまで意図していませんでしたが、時代の方が我々のアプローチに近づいてきたことを実感しています。



AI時代の医療データ処理 | 新たな可能性の扉

今回の方針変更には、もう一つの重要な示唆が含まれています。それは、大規模言語モデル(LLM)や人工知能によるデータ構造化の可能性を暗に視野に入れているのではないか、という点です。


近年、AIの発展は目覚ましく、特に自然言語処理の分野では大きな進歩が見られます。テキスト情報をAIで意味解析し、文脈を理解して必要な情報を抽出する技術は、すでに実用レベルに達しつつあります。


医療文書の場合、Narrative(自然言語テキスト)で書かれた診療情報提供書や退院サマリーから、病名、症状、処方薬、検査結果などの重要情報をAIが自動的に抽出し、構造化データに変換することが技術的にも実用可能な段階になってきています。


同様に、画像データについてもOCR技術とAIを組み合わせることで、検査結果のスキャン画像や医療機器の画面キャプチャから数値やテキスト情報を読み取り、データベースに格納できる形式に変換することができます。このような技術を活用すれば、データ生成時点では非構造化のままでも、後から必要に応じて構造化データを生成することが可能になります。


厚生労働省が今回の技術解説書で構造化を「任意」としたのは、将来的にこうしたAI技術が医療データの構造化を担うことを見越している可能性があります。現時点で無理に全国一斉の構造化を進めるよりも、まずはデータ共有の仕組みを整え、技術の進歩とともに段階的に構造化を進めていく。そして、将来的にはAIが自動的にデータを構造化し、人間の負担を最小限に抑える。そんな未来像が、この方針転換の背景にあるのかもしれません。


MEGTARは既にこのようなAI活用のアーキテクチャを実装しており、AI時代の医療データ基盤として理想的なポジションに立っていると言えます。画像として取り込んだ医療機器の情報をAIで解析し、必要なデータを抽出・構造化する。このプロセスは、まさに今後の医療データ処理の主流となる可能性を秘めていると考えています。



医療データ統合の未来 | 現実的なアプローチの価値

技術解説書2.0.0版が示したのは、医療現場の負担や運用の現実を重視した段階的な標準化という方針です。


文書情報についてはまずNarrative(テキスト)やPDF中心で共有を始め、構造化データは対応可能な施設から順次進めていく。この方向性は、データのばらつきを一定期間容認し、将来的にはAIによる構造化が担われる可能性を示唆しています。


この流れの中で、医療データ統合技術の重要性はますます高まっていくでしょう。標準化の完全な実現には相当な時間がかかる見込みであり、その間、異なる形式のデータを統合し、活用可能な形に変換する技術が医療現場を支えることになります。後処理型のアプローチは、現実的で実用的な解決策として、今後さらに注目を集めると考えられます。


MEGTARのような医療データ統合プラットフォームは、こうした環境において医療機関と技術の架け橋となる役割を担っていきます。多様なデータ形式に対応し、AIを活用して効率的にデータを統合・構造化する。そして、医療従事者が本来の業務に集中できる環境を整える。それが、これからの医療データ基盤に求められる姿なのかもしれません。


標準化は確かに重要な目標ですが、それが実現するまでの間、医療現場は待っているわけにはいきません。今あるデータを最大限活用し、患者さんにより良い医療を提供するために、現実的で柔軟なアプローチが求められています。技術解説書2.0.0版は、その方向性を明確に示したものと言えるでしょう。


もし今回の記事で少しでもMEGTARに興味を持っていただけたら、ぜひ実際に試してみてください。こちらからご相談も承っております。


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