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技術を「負担軽減装置」から「共に生きる環境装置」へ | 講演会から学んだMEGTARの本質的価値

  • 執筆者の写真: MICHIHIKO MIKAMI
    MICHIHIKO MIKAMI
  • 9月22日
  • 読了時間: 4分
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みなさん、こんにちは。MEGTAR開発担当の三上です。


先日、福岡で二つの講演会に参加しました。


ひとつは福岡県難病相談支援センター主催の市民公開講座「可能性をひらく」。


難病や障害をテーマにした講座で、医療関係者や福祉職の方だけでなく、患者さんやご家族、一般の市民も多く参加されていました。


もうひとつは福岡県若年性認知症サポートセンター主催の「新しい認知症観を知ろう」という認知症本人講演会。こちらは認知症と共に生きるご本人とその支援者、そして行政の担当者がそれぞれの立場から現状を語る場で、それぞれの視点から認知症がどう見えているのか、考え方を見直す機会となりました。


テーマは異なっていましたが、二つの場に共通して流れていたメッセージがありました。


それは「本人の能力や意思を尊重し、周囲と共に安心して生きられる環境をどうつくるか」という問いです。医療や介護のIoT化を職務としている私にとっても、この視点は非常に大きな気づきとなりました。



講演から見えてきた共通点


「克服」や「勝つ」という物語の限界


病気や障害を「乗り越える」「克服する」ことに価値を置くと、どうしても「できないこと」に直面した瞬間に挫折感が大きくなります。講演の中でも、難病を抱える方が「闘病」という言葉に自分を重ねることに疲れてしまった経験を語っていました。闘う姿勢を保つこと自体が新たな負担になるのです。


認知症の当事者の場合も同様です。「認知症に勝つ」「進行を止める」という物語を掲げると、現実とのギャップがつらさを増幅させます。むしろ「認知症と共にどう生きるか」に視点を移したとき、初めて前向きな関係性が築かれるのだと気づかされました。


「できること」に光を当てる視点


作業療法士の先生が強調していたのは「残された能力をどう支援するか」でした。リハビリや日常生活の支援において、失った機能よりも「今できること」に焦点を当てる。それが本人の尊厳を守り、前向きな気持ちを支えることにつながります。


この考え方は障害のある人のスポーツや文化活動にも通じます。例えば、パラスポーツの現場では「できないことを補う」より「できることを最大限に発揮する」ことに意義が置かれています。そこには「挑戦の喜び」や「自分らしさを表現する力」があり、医療や介護の領域にも応用できる視点だと感じました。


居場所と役割の重要性


さらに心に残ったのは「役割を持つ」ことの大切さです。認知症カフェやグループホームでは、単にサービスを受けるだけでなく、当事者自身が役割を担うことで生き生きと関わる姿が紹介されました。コーヒーを淹れる役、迎える役、話し相手になる役。小さな役割でも「自分はここに必要とされている」という感覚が、人を大きく支えます。


障害のある人の活動でも、伴走者や仲間と関わりながら自分の持ち場を見つける姿が多く語られていました。共通していたのは、「居場所があること」「役割を持てること」が人の可能性を大きく広げるということです。



MEGTARに重ねて考える


私は医療・介護現場での医療機器監視システム「MEGTAR」に取り組んでいます。これまで「現場の負担を減らす装置」としての価値を強調してきました。確かに、アラームの一元化や業務効率化、医療安全の向上といった点は重要です。看護師や介護職の方にとっては、切実な課題の解決手段となります。


しかし、今回の二つの講演を通じて、それだけでは不十分だと強く感じました。MEGTARの本質的な価値は「安心できる環境を支える装置」であることにあるのではないか、と気づかされたのです。


具体的には、


  • 看護師や介護職が安心して働ける

  • 本人が過度に監視されるのではなく「見守られている」と感じられる

  • 家族も含めて「共に安心して生きられる環境」が整う


――こうした「環境装置」としての役割こそ、MEGTARが目指す方向ではないかと思うのです。単なる効率化のツールではなく、人と人の関係性を支える基盤。ここにこそ、技術の存在意義があるのだと再認識しました。



これからの視点


技術は単なる「負担軽減」や「効率化」にとどまらず、人と人とのつながりを支える装置になれるはずです。そのために、これからのMEGTARには次のような問いを持ち続けたいと思います。


  • 本人の意思決定を支援する仕組みをどう組み込むか

  • 「できること」を活かす設計思想をどう反映させるか

  • 居場所や役割を広げる社会的文脈とどう接続するか


これらはすぐに答えが出る問いではありません。しかし、問いを持ち続けること自体が開発の方向性を決める灯台になるのだと感じています。



おわりに


二つの講演会での学びは、私にとって「技術をどう語るか」を根本から見直すきっかけになりました。MEGTARは「負担を減らす装置」ではなく、本人と周囲が共に安心して生きられる環境をつくる装置である。この視点を軸に、これからの発信や開発を続けていきたいと思います。


医療や介護の現場で働く人々、そこに関わるご本人やご家族、そして地域社会。すべての人にとって「安心して共に生きられる環境」をどう整えるか。その挑戦の一部として、MEGTARを進化させていきます。


今後もMEGTARをよろしくお願いします。

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