
みなさん、こんにちは。MEGTAR開発担当の三上です。
MEGTARの開発を進める中で、これまでは医療者側の視点ばかりを考えていましたが、人工呼吸器を使用する方々の視点、とりわけ療養先選択がどうなっているのかに関心を持ち、難病相談支援センターに取材してきました。
医療機器の管理方法は療養環境によって大きく異なっており、より適切なシステム設計に活かせる取材となったと感じていますので、内容をレポートしたいと思います。
取材のきっかけ
人工呼吸器を使用しながら生活される方が増えています。
それぞれの療養環境によって医療機器の管理方法や課題は異なっているはずだと考えて調べ始めましたが、文献やウェブサイトでは断片的な情報しか得られませんでした。
そこで、現場の実態を知るために、難病相談支援センターを訪問することにしました。
特に療養先の選択は、医療機器管理の体制に大きな影響を与えるため、実際の療養環境や選択肢について調べることが、システムの改善につながるはずだと考えたのです。
相談員との対話で見えてきた実態
限定的な療養先の選択肢
地域によって差はありますが、多くの地域で医療的ケアが必要な方を受け入れられる施設は数えるほどしかないことが分かりました。
主な理由は24時間看護師が常駐できる体制を整えることの困難さです。この状況は、医療機器管理の観点からも大きな課題となっています。
病院療養が主流となる背景
医療保険の適用により費用負担が抑えられること、医療スタッフが常駐する安心感から、多くの方が病院での療養を選択されています。
医療機器管理の面では最も安全な選択肢ですが、必ずしも本人の希望ではなく、現実的な制約による選択という側面も大きいことが分かりました。
在宅療養の現状
在宅療養については、様々な制度が整備されつつあるものの、医療機器管理を含む24時間の介護体制を組むことの難しさが大きな課題となっています。
特に夜間の急変時対応への不安や、機器トラブル発生時の対応に関する懸念が多く聞かれました。
印象的だった事例
相談員の方から、以下のような実例を伺うことができました。
ALSの患者さんが、施設での療養を希望したものの、医療機器管理体制が整備された受け入れ先が見つからず、病院での長期療養を余儀なくされているケース
在宅療養を選択したが、夜間の人工呼吸器管理への不安から、家族の睡眠が十分に取れず、結局病院に戻らざるを得なかったケース
医療的ケア対応可能な施設に入所できたが、24時間体制の人件費が高額で、継続的な利用に不安を感じているケース
これらの事例から、医療機器管理体制の整備状況が、療養先の選択に大きな影響を与えていることが分かりました。
支援体制の現状と課題
医療面での課題
医療的ケアに対応できる施設の不足に加え、在宅医療における緊急時対応の体制整備が不十分です。特に夜間の医療機器管理体制の確保が大きな課題となっています。
制度面での課題
医療保険と介護保険の併用における複雑さ、施設入所時の費用負担の大きさなど、制度面での課題が療養先の選択を制限しています。また、支援制度の地域格差も大きな問題です。
人材面での課題
医療的ケアに対応できる看護師の不足、24時間体制を維持するための人員確保の困難さなど、人材面での課題が深刻です。これは特に、医療機器管理の専門知識を持つ人材の確保において顕著です。
システムへの示唆
取材を通じて、遠隔監視システムに求められる要件が明確になってきました。
療養環境別の最適化
病院:既存の医療機器管理システムとの連携を重視
施設:夜間の少人数体制を考慮した警報システムの実装
在宅:家族でも扱いやすく、邪魔にならないユーザーインターフェースの実現
必要な機能の具体化
夜間監視機能の強化
異常の早期検知と自動通知システム
重要度に応じた段階的なアラート設定
リモートでの実測値確認機能
記録・報告機能の充実
療養環境に応じたログ記録様式
関係者間での情報共有機能
トレンド分析による予防的対応の支援
サポート体制の整備
24時間対応可能なヘルプデスク
トラブル時の遠隔サポート機能
定期的なリモートメンテナンス機能
今後に向けた考察
取材で得られた知見を基に、以下の改善を進める必要性を感じています。
医療的ケア対応施設の支援
遠隔監視システムを活用することで、夜間の人員配置を効率化し、施設運営の採算性改善に貢献できる可能性があります。
在宅療養支援の強化
家族の負担軽減のため、直感的な操作性と確実な異常検知機能を備えたシステムの開発が求められます。特に、夜間の見守り機能の強化と、画面の光が睡眠を妨げないよう、明るさを調整する機能が重要です。
地域連携の促進
医療機関、介護施設、在宅サービス事業者間での情報共有を促進し、シームレスなケア提供を支援するシステムの構築が必要です。
取材を終えて
この取材を通じて、医療技術の進歩と療養環境の整備には大きなギャップがあることを実感しました。特に、医療機器の管理体制については、それぞれの療養環境に応じた柔軟な対応が求められています。
遠隔監視システムには、このギャップを埋める役割が期待されています。医療の安全性を確保しながら、患者さんとそのご家族の希望に沿った療養生活を実現するため、さらなるシステムの改善を進めていきたいと考えています。
今後は、これらの課題について、より多角的な調査を進めながら、実際のユーザーの声を取り入れたシステム開発を行っていく予定です。医療・福祉の専門職の方々や、行政担当者、そして何より当事者の方々との対話を続けながら、よりよいソリューションを追求していきたいと思います。
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