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障害を超えて:アクセシビリティがめざすべき未来

執筆者の写真: MEGTAR_PRMEGTAR_PR

更新日:1月16日



2024年11月30日(土)、福岡市で開催された「アクセシビリティカンファレンス福岡2024」に参加しました。


このカンファレンスの目的は、テクノロジーと人間の可能性について、参加者に、「つぎはどうする」という問いをなげかけるものでした。


4つの講演の中で、特に心に深く響いたのは、『誰のためのアクセシビリティ? 障害のある人の経験と文化から考える』の著者、

田中みゆき氏による「障害は乗り越えられるべき課題なのか?」でした。


講演で田中みゆき氏は、アクセシビリティについて私たちが日常的に見過ごしているかもしれない根本的な3つの問いを投げかけてくれました。



  1. 誰のためのアクセシビリティなのか?

  2. 提供側の満足に陥っていないか?

  3. 当事者のニーズを本当に理解しているのか?



これらの問いは、単なる配慮や善意を超え、私たちの社会のあり方そのものを根本から問い直す、挑戦的な視点です。


アクセシビリティは慈善や思いやりではなく、基本的人権であるというのです。

基本的人権とはすべての人に関して無条件に尊重される権利です。

基本的人権において、情報へのアクセスは保証されるべきで、当事者が意思決定に関わることが不可欠なのです。


この意味において、現在はまだ基本的人権が十分に尊重され、アクセシビリティが確保されている社会とはいえないのかもしれません。



障害という概念自体の再定義も、衝撃的でした。


障害は個人の心身機能の制限ではなく、社会との相互作用によって生じる複合的な概念である、とのことです。


そして、障害は以下2つの側面を持つのだそうです。



  1. インピアメント:心身機能の障害

  2. ディスアビリティ:社会において生じる具体的な障壁



インピアメントは、それ自体が問題というわけではなく、そのおかげで「環世界」を作り上げることもあります。


「環世界」とは、五感それぞれが作り上げる独自の世界観のことです。


具体的な例として紹介されたオーディオゲームは、驚くべき創造性に満ちていました。

RPGで主人公が高いところに上がると音程も高くなるという設計。

これは単なる音響効果ではなく、視覚障害者が異なる感覚で世界を体験するための、繊細で知的な工夫なのです。


健常者だけの視点では、このような発想に到達することは困難です。

実際に、このオーディオゲームには視覚に障害がある開発者が加わっているそうです。


もし関係者に障害の当事者がいなければ、私たちは無意識のうちにインピアメントを健常者の視点だけで解決しようとしてしまうでしょう。


「環世界」は、私の世界の見方を根本から変え、健常者の視点から脱却するためには、以下が不可欠なのだと気づかれました


  • マジョリティが自身の特権を意識すること

  • 障害のある人々が技術創造の側に立てるようにすること

  • 多様な視点を開発プロセスに組み込むこと



それでは、私たち医療機器監視システムのベンダーは、具体的に何ができるでしょうか。

講演を聞いて、以下のアプローチが浮かびました。



ユーザー参加型設計


障害のある当事者を開発チームに積極的に招聘

多様な感覚と経験を反映したインターフェース設計



マルチモーダル情報提供


視覚、聴覚、触覚など複数の情報伝達方法

音声読み上げ、高コントラスト表示、触覚フィードバック



カスタマイズ可能なインターフェース


個人の能力や好みに応じた設定変更

フォントサイズ、色調、音量などの調整機能



包括的な操作方法


様々な入力方法のサポート

音声コマンド、スイッチ入力、代替入力デバイス



リアルタイム通訳・字幕機能


手話通訳

自動字幕生成

リアルタイム音声-テキスト変換



継続的なユーザーフィードバック


定期的な使用性評価

コミュニティからの継続的な改善提案



これらのアプローチを常に意識し、段階的に開発に生かしていきたいと思います。



この講演は、技術開発における人間性と多様性の重要性を、私に深く考えさせる機会となりました。

アクセシビリティは単なる機能追加ではなく、すべての人の尊厳と可能性を尊重する、社会変革のための重要な視点なのだと理解しました。



これからの技術開発は、誰一人取り残さない、真にインクルーシブなアプローチを目指すべきだと思います。

テクノロジーは人々を分断するのではなく、つなぐものであるべきだと、認識を新たにしました。

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