
【はじめに】
みなさん、こんにちは。MEGTAR開発担当の三上です。
先日、AMED ロボット介護機器開発等推進事業 令和6年度成果報告会に参加しました。
今回の報告会の中に、医療・介護現場で活用されるテクノロジーがどのように現場の生産性向上や安全性確保に貢献しているのかについての講演があり、私自身、技術開発における「共創」の大切さを改めて実感しました。
【講演の印象と学び】
講演のテーマは「利用者、職員に選ばれる介護テクノロジーとは ~生産性向上に資するテクノロジー活用の現場から~」でした。
特に印象的だったのは、睡眠センサーを活用した見守り機器の導入事例です。
従来は、利用者が眠っているか起きているかにかかわらず一定のタイミングで起こす仕組みでしたが、睡眠センサーを活用した見守り機器によって「起きている利用者を活動に促す」という新たな支援モデルへと進化したそうです。
このように、技術が現場のニーズに合わせて柔軟に変化している点は、医療・介護現場における大きな前進だと感じました。
【講演から再確認した共創の必要性】
しかしながら、現場では先進的なテクノロジーに対する関心が高いにもかかわらず、実際の導入率は伸び悩んでいるという現状があるようです。
その理由のひとつは、シーズ(技術側の発想)とニーズ(現場の具体的な要求)とのミスマッチです。
技術者が自分たちの持つ先進技術を前面に出して開発を進めても、現場が本当に必要としている解決策にならなければ、双方にとって十分なメリットを享受できません。
さらにもうひとつの理由として、先進技術の先行開発費を回収するために設定される製品価格が、現場が許容できるコストを越えてしまうこともあげられます。こちらも大きな障壁となっています。
今回の講演を聞くことで、単に先進技術を提供するだけではなく、現場と対話しながら共に課題を解決する「共創」のプロセスを経ることが、シーズとニーズをマッチさせ、適正費用内で開発を行うことに不可欠であることを再認識しました。
【共創とは何か】
共創とは、現場の意見を単に受け入れるだけでなく、技術者と現場の関係者が対等なパートナーシップを築きながら、一緒に最適な解決策を見出していくプロセスを意味します。
現場は必ずしもすべての答えを持っているわけではなく、対話を重ねる中で新たな気づきやアイデアが生まれ、最終的に双方にとってメリットのある製品やサービスが創出されるのです。
私たちは、この共創のプロセスを促進するためのフレームワークとして、デザイン思考を導入しました。
デザイン思考とは、人間中心の問題解決手法であり、利用者や現場の実情に寄り添うアプローチです。
まずは、利用者や現場関係者に深く共感し、彼らが直面している課題や求めるニーズを十分に理解します。次に、その課題を明確に定義し、多様な視点からアイデアを創出するフェーズに進みます。そして、迅速に試作品(プロトタイプ)を作成し、実際の環境でテストを行いながら、得られたフィードバックをもとに改善を重ねる、という反復的なプロセスを経ることで、現場にとって本当に価値のある解決策を導き出すことが可能となります。
このように、デザイン思考は共創をつくりだすための強力な手法であり、現場と技術者が互いに補完し合いながら、新たな解決策を共に創造する基盤として、私たちのプロジェクトに欠かせない考え方となっています。
【MEGTAR開発プロジェクトの実践】
私たちが実際にデザイン思考を取り入れて「共創」に取り組んだのが「MEGTAR」プロジェクトです。
MEGTARについては別に記事を書きましたので、下部の参考記事をご覧ください。
MEGTARは、利用者や現場スタッフの具体的なニーズに即したシステムを目指し、コロナ禍という困難な状況下でもオンラインミーティングやワークショップを活用して、関係者全員が意見を出し合う環境を整えながら進められました。
プロジェクトはまず「共感」のフェーズから始まり、医療現場で働くスタッフの話を丹念に聞くことで、彼らが直面している日々の課題や利用者が抱える問題を深く理解しました。
その後、見えてきた課題を整理し、「問題の抽出」を行い、現場が本当に求める解決策は何かを議論しました。
ここでは、現場の意見を単に受け入れるのではなく、関係者が一緒に考え、仮説を立てるプロセスが非常に重要でした。
【デザイン思考とリーンスタートアップの融合】
次のステップとして、「アイデア創出」と「プロトタイプ作成」のフェーズに進みました。
ここで私たちは、基本となるデザイン思考のアプローチに加え、リーンスタートアップの手法を取り入れました。
リーンスタートアップでは、初期段階で低コストかつ迅速に試作品を作成し、実際の現場でテストを重ねることでフィードバックを得ながら、何度も改善を図ります。
このプロセスにより、現実の現場に即したシステムへとMEGTARは進化していきました。
プロジェクトはコロナ禍による医療機関への入館制限期間も含め、約2年にわたって実践されました。
【共創成功のポイント】
今回のプロジェクトを通じ、共創を成功させるために特に重要だと感じたポイントを以下に整理します。
対等なパートナーシップの構築
現場の知見と技術者の専門性を融合させるためには、どちらか一方が主導するのではなく、双方が対等に意見を出し合う関係性が不可欠です。
継続的な対話とフィードバックのプロセス
初期のアイデアに固執せず、常に現場からのフィードバックを受け入れながら改善を重ねることが大切です。リーンスタートアップの手法がこのプロセスに大いに役立ちます。
柔軟な思考と試行錯誤の精神
現場の要求は一律ではなく、状況に応じて変化します。固定概念にとらわれず、柔軟に対応する姿勢こそが、共創を成功に導く鍵となります。
【さいごに】
デザイン思考とリーンスタートアップの手法を融合することで、現場にとって本当に役立つシステムを迅速に開発できることを、MEGTARプロジェクトが証明してくれたと思っています。
技術者が一方的に答えを提示するのではなく、医療・介護現場と共に課題を共有し、対話を重ねながら最適な解決策を生み出すプロセスこそが、イノベーションの原動力となります。
これからも、現場の声に寄り添いながら、医療・介護の現場に選ばれるテクノロジーの実現を目指し、皆様と共に未来を切り拓いていきたいと考えています。
これからのMEGTARにご期待ください!
Comentarios